ぺんぎんのインターン生活(国際機関の場合)
みなさん、こんにちは。ぺんぎんです。
ここ最近のパリは大変寒く、ちょうど今も雪が降っています。2週間ほど前はずいぶん暖かく「ああもう冬も終わって春が来た!」なんてことを考えていたのですが、どうやらまだもう少し冬は続きそうです。ここで雪のパリの写真を1枚。
はい、ということで、今回のポストでは、ぺんぎんが2017年秋学期に行ったインターンシップについて書きたいと思います。
PSIAの学生は3学期の間、授業に出席する代わりにインターンシップ、修士論文執筆または海外留学の3つの選択肢から1つ選びます。詳しくはPSIAウェブサイトをご覧ください。
わたくしぺんぎんの場合、Sciences Poに入った理由の一つが、学期中にインターンシップができるという点だったので、迷うことなくインターンシップを選びました。夏休み中や休学して行うことももちろんできますが、時間や出費を考えると、修士過程の中でインターンシップを行う期間が与えられているのは、個人的にはとても魅力的でした。
ターゲットは最初から国際機関でのインターンシップ。将来の目標として、やはり国際機関で働きたいと考えているので、一度内部に入って国際機関の仕事を実際に体験してみたいと思ったからです。
インターンシップ捜索開始
Sciences Poの場合、インターンシップの募集はたくさん回ってきますが、特定の団体や機関とのインターン派遣提携のようなものはないので、通常通り自分で探して自分で応募しなくてはいけません。「Sciences Poに入れば、簡単にインターンシップが見つかるんだろうな!」などど甘いことを考えていた自分としては、だいぶがっかりでした。
ということで、2学期目の2月ごろからぼちぼちインターネットで検索し始めました。
もともと難民や無国籍者に興味があるので、UNHCRやIOMのアジア事務所を念頭に探し始めました。UNHCRなどはホームページに公式のインターン応募フォームを設置していますが、ものすごい数の人がこのフォームを通して応募しており、聞くところによればこの公式フォームは滅多にチェックされないようなので、この公式応募フォームを通しての応募はあまりお勧めしません。
代わりに、FacebookやLinkedIn、その他ウェブサイトを使って、自分の興味がある分野の募集または概要を探して、担当者に直接履歴書と志望動機書を送りつけました。公式な募集が出されていない場合でも、担当者に直接メールを送ると返信が返ってくることもあります(ちなみに、募集がない状態で応募することをCold Applicationというみたいです)。
自分の場合、20通ほどのメールを送って、実際帰ってきたのは2,3通といったところ。国際機関のインターンシップはやっぱり募集人数が多いだけあって、返信率もとても低いです。めげずに頑張りましょう…。
インターンシップ発見!
何個か返信が返ってきた中でも、金銭的に難しかったり、時期的に合わなかったり。結局最終的に、パリにある某国際機関に拾ってもらいました。当初の予定だった難民・無国籍者と直接の関係はないのですが、自分の趣味に合致した内容のインターンシップだったのでここに決めました。
同じ部署で働いているインターンの話によると、インターンの選抜方式は本当に多種多様で、ほぼスーパーバイザーの裁量で決められます。直接面接と筆記試験を課されたという人もいれば、電話でインターンシップの内容を確認しただけで終わったという人もいます。
そんなこんなで、初めて国際機関に足を踏み入れることになりました。
巨大な組織で渦巻く国際政治
このポストでは、インターンシップの内容を深く掘り下げて説明するつもりはないですが、自分のインターンシップはあまりアカデミックではなかったかもしれません。他の国際機関やシンクタンク、NGOでインターンシップをした人たちは、様々なリサーチを基にレポートを書いたり、研究の助手をしたりしている人が多いような印象を受けます。一方、自分のインターンシップは、様々なテーマに関する文章作成(会議資料やプロジェクトの企画書など)からイベントの企画、事務作業(招待状の作成等)など、多岐にわたりました。
半年間の国際機関でのインターンシップの中でやはり一番印象に残ったことは、国際機関はintergovernmentalであるという点です。加盟国代表団が集まる国際会議だけでなく、有識者を招待して開催する小規模な会議や機関内部での人員配置、予算の使い道やプロジェクトの進行など、すべてが国際政治の舞台だと感じました。
一見政治と関係ないように見える事柄も、国際機関で扱われる以上すべて政治に関わってきます。一つの例をあげましょう。
原住民言語についての国際会議に出席していたときのこと、ある国の代表団の一人が突然「私たちの国には原住民言語というものは存在しません」と断言し始めました。実際この国には、公用語とは異なる様々な少数言語が存在しているので、自分自身この発言を聞いたときに理解できませんでした。後にわかったことですが、「原住民言語」という単語を使ってしまうことによって、間接的に「その土地は、本来国のものではなく、そこに住む原住民族または原住民言語を話す人々に属するものだ」ということを示唆し、少数民族の独立意識を高めてしまうのだそうです。だからこそ、客観的に見れば明らかに異なる言語であっても、「原住民言語」という単語を使うことを頑なに拒否する国がいくつかあります。このように、一見「言語」という文化に関する議論の中にも、国家主権や領土問題といった国際政治が絡んでくるのです。
また、どんなに重要な国であっても、その国際機関に属していない国は活動に一切参加できません。そこで働く職員たちも、機関の方針に忠実に従わなければならないため、加盟国でない国との接触は、厳しく制限されます。もちろん加盟国以外の国の人は通常インターンシップをすることさえできません。
巨大な組織の中のさまざまな矛盾
このように、国際機関で起こる全ての決断や決定は国際政治を基に決められます。だからこそ、国際機関には様々な矛盾が見られます。
簡単な例を挙げれば、自由なインターネット環境について話し合う国際会議が中国で行われたり、女性の権利向上を話し合う国際会議がサウジアラビアで開催されます。なぜならこれらの国はお金と力があるからです。
国際機関で働くからには、自分個人の考え方とだいぶ違う納得の行かない決定でも、国際政治に則って決められた決定を受け入れなくてはならないことがたくさんあるのかもしれません。
国際機関は共通して、inclusiveness(包括性)やsustainable development(持続可能な開発)、human rights(人権)、equality(平等)などを推進しようと活動しています。もちろん、多くの職員がこの信念を胸に、各々の仕事を一生懸命に遂行しています。
ですが、小さなところに目をやると、加盟国以外の出身の学生はインターンとしてさえ受け入れられなかったり、ほぼ全てのインターンシップは無給で金銭的に余裕のある人だけがインターンシップを行えるシステムだったり、大量のコピー紙を毎日無駄にしたり、誰もいない会議室の電気がつけっぱなしだったり、こんな現状を見ると様々な矛盾と疑問が頭に浮かびます。
国際機関は、一般企業のように利益の向上を目指している訳でも、国際NGOのように競争が激しい訳でもありません。そんな環境も、このような矛盾を生み出す一つの要因なのだろうなと感じます。
巨大な組織で働く、楽しいそしてすごい人たち
そんな国際機関の中では、多くの人たちが働いています。パリにある国際機関なので、事務職はフランス人がほとんどですが、専門職になれば国籍配分があるので、多種多様な言語、文化、バックグラウンドの人たちがいます。そして、すごい経歴の持ち主ばかりです。正規職員のほとんどが博士号を持ち、母語と英語以外に2,3言語操る人がたくさんいます。インターンも含め、みんなとても頭の回転が速く、自分の考えをしっかり持っています。それと同時に、とても気さくで、オンオフの切り替えがはっきりしている人たちばかりです。
世界中からやってきたすごい人たちが、日々過程は違えど同じ目標に向かって活動しています。
まとめ
この半年間の国際機関でのインターンシップで、国際機関で働きたいという気持ちがより強くなったと同時に、国際機関の嫌な点も垣間見えました。
また、国際機関がいかに文字通り「国際的」な職場であるかを実感し、そして、個人的にやっぱりこんな国際的な空間で働くことが好きだということも再認識しました。
また、スーパーバイザーや同じ職場で働いた職員、インターン、日本代表部の方や日本人職員の人たちなど、国際機関で働くまたは国際機関を目指す多くの人と接し、話をする機会を得られました。
正直、このインターンシップをすることに決めたときは、第一希望ではない機関だったので、少し不本意だったのですが、この半年間で得たこれらすべてをひっくるめて、今はこの機関での職務を経験できて、とてもよかったと思っています。
長々と書いてきましたが、自分と同じく国際機関を目指す人に、インターンシップの雰囲気を伝えられたらとても嬉しいです。
ではまた。
(ぺんぎん)